脳虚血における興奮性アミノ酸神経伝達物質の役割

1989 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 63440054
• 研究機関: 帝京大学
• 研究代表者: 田村 晃 帝京大学, 医学部, 教授 (80111532)
• 研究分担者: 戸向 則子 帝京大学, 医学部, 教務職 (30192214) ; 高木 清 帝京大学, 医学部, 講師 (40197059) ; 後藤 修 帝京大学, 医学部, 講師 (40134598) ; 桐野 高明 帝京大学, 医学部, 助教授 (10161605)
• キーワード: 脳虚血 / 神経伝達物質 / 黒質 / 視床 / 記憶 / 学習

研究概要

(1)局所脳虚血モデルにおける黒質および視床の変化:ラットの中大脳動脈(MCA)閉塞モデルにおいて、非虚血部である閉塞側黒質および視床の脳循環代謝測定および病理組織学的検討を行なった。左MCA閉塞1週間後には同側黒質の有意な血流増加、グルコ-ス代謝の亢進が認められた。グルコ-ス代謝の有意な亢進は2週間後まで認められた。組織学的検索では、MCA閉塞1週間後には同側黒質網様部の神経細胞の変性が認められ、2週間後には同側黒質の神経細胞壊死、細胞浸潤などが認められ、黒質は徐々に萎縮していった。黒質の左/右面積比は、正常ラットでは1.036±0.126(Mean±SD)、sham手術群では6カ月後0.943±0.113と黒質面積の左右差は認められなかったのに対して、MCA閉塞群における黒質左(閉塞側)/右(反対側)面積比は、1週間後0.963±0.229、2週間後、0.523±0.181、1カ月後0.433±0.198、6カ月後0.329±0.106と閉塞2週間後より有意に減少していった。視床は同側で閉塞1週間後より神経細胞の変性が認められ、徐々に萎縮していった。左右視床面積比は、正常群で1.00±0.04(Mean±SD)、sham手術群で0.99±0.04(6カ月)であった。MCA閉塞群では0.87±0.06(2週間)、0.77±0.07(1カ月)、054±0.11(3カ月)で、全ての時点で正常群、sham手術群に対し有意差が認められた。(2)神経伝達物質の測定:ラットMCA閉塞モデルにおける大脳皮質と基底核における神経伝達物質の微小透析法による測定では、glutamate、aspartateは閉塞後速やかに増加したが、その後の経過は両部位の間に差が認められた。NMDAレセプタ-阻害剤の投与により皮質アミノ酸濃度に変化は認められなかった。(3)行動学習機能測定:MCA閉塞2週間後まで行なった結果、虚血群で記憶の保持能力の障害が認められた。

研究成果

• [文献書誌] 田村晃,桐野高明,戸向則子,岩沢智美他: "ラット中大脳動脈閉塞後の同側黒質の組織学的変化" 医学のあゆみ. 149. 789-790 (1989)
• [文献書誌] 藤江和貴,桐野高明,田村晃,岡秀宗他: "局所脳虚血後にみられた視床の変性・萎縮" 医学のあゆみ. 148. 621-622 (1989)
• [文献書誌] 田村晃,中山比登志,桐野高明,佐野圭司: "中大脳動脈閉塞後の同側黒質のdisinhibition hyperemiaと神経細胞傷害" Brain Hypoxia. 3. 43-47 (1989)
• [文献書誌] Kirino T,Tamura A,Sano K.:"Persistent presynaptic terminals in hippocampal glial"sclerosis"following ischemia." Brain Res.
• [文献書誌] Tamura A,Kirino T,Sano K,Oka H.:"Atrophy of the ipsilateral substantia nigra following middle cerebral artery occlusion in the rat." Brain Res.
• [文献書誌] Kanemitsu H,Tamura A,Kirino T,Oka H,Sano K,Iwamoto T,Yoshiura M,Iriyama K.:"Allopurinol inhibits uric acid accumulation in the rat brain following focal cerebral ischemia." Brain Res. 499. 367-370 (1989)