脳虚血における興奮性アミノ酸神経伝達物質の役割

1990 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 63440054
• 研究機関: 帝京大学
• 研究代表者: 田村 晃 帝京大学, 医学部, 教授 (80111532)
• 研究分担者: 戸向 則子 帝京大学, 医学部, 教務職員 (30192214) ; 高木 清 帝京大学, 医学部, 講師 (40197059) ; 後藤 修 帝京大学, 医学部, 講師 (40134598) ; 桐野 高明 帝京大学, 医学部, 助教授 (10161605)
• キーワード: 脳虚血 / ラット / 神経伝達物質 / グルタミン酸 / アスパラギン酸 / MKー801 / 記憶 / 迷路学習

研究概要

1.興奮性アミノ酸受容体の阻害剤の局所脳虚血に対する効果:ハロセン吸入麻酔下に、SーDラットの左中大脳動脈を経眼窩的に閉塞して局所脳虚血モデルを作成した。このモデルにおいて、微小透析用カニュ-レを線条体および大脳皮質に挿入し、それぞれの部位におけるアミノ酸神経伝達物質の測定を行なった。興奮性アミノ酸(グルタミン酸、アスパラギン酸)の組織内濃度は虚血負荷後に速やかに、有意に増加した。このモデルにおいて、興奮性アミノ酸受容体の非競合的阻害剤であるMKー801を投与したが、皮質の興奮性アミノ酸濃度は変化しなかった。また、同じ局所脳虚血モデルにおいて梗塞巣のサイズに対する同剤の効果を検討した。興奮性アミノ酸受容体の非競合的阻害剤MKー801を前投与した後に局所脳虚血を作成した。体温をモニタ-しつつ、24時間後にTTC染色法により梗塞巣を計測した。その結果、ラットの局所脳虚血モデルでは線条体に梗塞巣には変化が認められなかったが、皮質でMKー801,10mg/Kg投与群で有意な梗塞巣の縮小が認められた。
2.行動学習機能と神経伝達物質の測定:ラットの左中大脳動脈閉塞による局所脳虚血モデルにおいて、8方向迷路を使用した空間認知態の検討を行なった。その結果、閉塞群において、sham手術群または正常群に対して有意な空間認知障害が3カ月以上の長期間にわたり認められた。これらの動物において、脳組織内アセチルコリン濃度を高速液体クロマトグラフィ-法により測定した結果、閉塞側皮質の広範な領域において組織内アセチルコリン濃度の有意な低下が認められた。

研究成果

• [文献書誌] Kirino T,Tamura A,Sano K: "Chronic maintenance of presynaptic terminals in gliotic hippocampus following ischemia." Brain Res. 510. 17-25 (1990)
• [文献書誌] Tamura A,Kirino T,Sano K,Takagi K,Oka H: "Atrophy of ipsilateral substantia nigra following middle cerebral artery occlusion in the rat." Brain Res. 510. 154-157 (1990)
• [文献書誌] Inuzuka T,Tamura A,Sato S,Kirino T,Yanagisawa K,Toyoshima I,Miyatake T: "Changes in the concentrations of cerebral proteins following occlusion of the middle cerebral artery in rats." Stroke. 21. 917-922 (1990)
• [文献書誌] Kubota M,Kitahara S,Narita K,Tamura A,et al: "Changes in cerebral free fatty acids and triacylglycerols in focal cerebral ischemia." Int J Biochem. 20. 1269-1272 (1990)
• [文献書誌] Fujie W,Kirino T,Tomukai N,Iwasawa T,Tamura A: "Progressive chrinkage of the thalamus following middle cerebral artery occlusion in rats." Stroke. 21. 1485-1488 (1990)
• [文献書誌] Inuzuka T,Tamura A,Sato S,Kirino T,et al: "Suppressive effect of Eー64c on ischemic degradation of cerebral proteins following occlusion of the middle cerebral artery in rats." Brain Res. 526. 177-179 (1990)