脳虚血における興奮性アミノ酸神経伝達物質の役割

1991 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 63440054
• 研究機関: 帝京大学
• 研究代表者: 田村 晃 帝京大学, 医学部, 教授 (80111532)
• 研究分担者: 藤江 和貴 帝京大学, 医学部, 助手 (90228966) ; 中山 比登志 帝京大学, 医学部, 講師 (00147050) ; 戸向 則子 帝京大学, 医学部, 教務職員 (30192214) ; 後藤 修 帝京大学, 医学部, 講師 (40134598) ; 桐野 高明 帝京大学, 医学部, 助教授 (10161605)
• キーワード: 脳虚血 / ラット / 神経伝達物貭 / グルタミン酸 / 記憶 / 学習

研究概要

1.興奮性アミノ酸受容体阻割剤の局所脳虚血に対する効果:ハロセン吸入麻酔下にラットの中大脳動脈を閉塞し、局所脳虚血モデルを作成した。あらかじめ股動静脈にカニュ-レを挿入し体血圧、血液ガスなどをモニタ-し、体温を一定に保った。興奮性アミノ酸受容体に1つであるAMPA受容体の拮抗剤であるNBQXを持続的に静脈内投与し、MBQXの生理学的パラメ-タに及ぼす作用および本剤の局所脳虚血に対する効果を検討した。NBQXの投与による生理学的パラメタ-の有意な変化は認められなかったが、NBQX投与群で死亡率が高かった。
2.線条体梗塞例における同側黒貭の変化:ラットの中大脳動脈閉塞モデルにおいて、同側の黒貭が抑制性神経伝達物貭の低下による脱抑制機序により変性・萎縮することを報告してきたが、臨床例においても同様の現象が認められるか否かを線条体梗塞例においてMRIにより観察した。線条体梗塞例において、発症1〜2週間後のMRIでT2強調画像で高信号領域が同側黒貭に一致して認められた。この結果は、ラットのモデルで認められたと同様の神経伝達物貭の関与した遠隔部病変が臨床例においても認められることを示している。
3.行動学習機能の測定:ラットの中大脳動脈閉塞モデルにおいて、受動的回避反応および能動的回避反応による行動学習機能の測定を慢性期に行い、部位別の組織障害(萎縮率)との相関を検討した。術後4〜8週の時期においても学習障害は持続しており、特に記憶の獲得能力の低下が認められた。組織障害と学習障害との相関は、能動的回避反応では認められなかったのに対し、受動的回避反応では視床および線条体では相関が認められなかったが、大脳皮貭および前脳全体では有意の相関が認められた。

研究成果

• [文献書誌] Kanemitsu H,Takagi K,Tamura A,Sano K:"Change SODーlike activity in rat brain following cerebral ischemia." Neurochemical Res. 16. 192 (1991)
• [文献書誌] Kirino T,Tsujita Y,Tamura A:"Induced tolerance to ischemia in gerbil hippocampal neurons." J Cereb Blood Flow and Metabolism. 11. 299-307 (1991)
• [文献書誌] 中根 一,桑原 正憲,寺岡 暉,安里 令人,田村 晃: "線条体梗塞に伴う同側黒貭の変化MRIによる観察" 医学のあゆみ. 159. 509-307 (1991)
• [文献書誌] 高木 清,金光 秀晃,河野 雅弘,光田 慶,田村 晃他: "ラット中大脳動脈閉塞モデルにおけるSuperoxide dismutaseとアスコルビン酸の変化" 脳神経. 11. 1075-1080 (1991)
• [文献書誌] Tamura A,Tahira Y,Nagashima H,Kirino T,Gotoh O,Hojo S,Sano K:"Thalamic atrophy following cerebral infarction in the territory of the middle cerebral artery." Stroke. 22. 615-618 (1991)
• [文献書誌] Yoshida S,Kirino T,Tamura A,Basugi N,Sano K:"Lithium ion does not protect brain against transient ischemia in gerbils." Stroke. 22. 84-89 (1991)
• [文献書誌] Kanemitsu H,Takagi K,Tamura A,Sano K:"Microchirculation Annual 1991ーJapanese Society for Microcirculation,1991" Tsuchiya M,Asano K,Katori M:, (1991)