腸管を利用した尿路(腸管利用群)24例(中感染症20例)を複雑性尿路感染症(対照群)26例と比較検討した。ここでいう感染症は膿尿の程度に拘らず10^3/ml以上菌が分離された例とした。1)は感染症のみの比較、2)、3)は感染のない例を含む全腸管利用群についての比較である。1)分離菌種:対照群では従来言われているようにP.aeruginosa、E.coli等が多くStreptococcus属は36株中2株のみであったが、腸管利用群ではStreptococcus属が最も多くP.aeruginosaは39株中1株のみで分離菌種の違いが見られた。また腸管利用群カテ-テル留置5例中4例にE.faecalisとProvidencia属を同時に含む組み合せが見られた。これらのことから腸を利用した尿路での細菌定着・増殖には菌種特異性があると考えられる。また、対照群の単独感染、複数菌感染は19例、7例であったが、腸管利用群では10例づつで、腸管利用群に複数菌感染が多く見られた。2)尿中分泌型IgA濃度:対照群25.0±11.3Mg/dl(Mean±SD)に対し腸管利用群では94.0±43.5と有意(p<0.0001)に高く、腸管利用群の感染防御の特徴と考えられた。尚、用いた腸管の部位、細菌数及び術後経過期間による有意差は見られなかった。3)尿pH浸透圧、尿素窒素濃度:pH、尿素窒素については両群に差がなかったが、浸透圧は腸管利用群で有意に低く腸管の吸収、分泌の関与が考えられた。尚、現在白血球のcell populationについて腸管利用群で好酸球の出現率が高い結果が得られている、好酸球のある種の蛋白はsーIgAにより放出が促され、S.aureusやE.coliに対し殺菌的と報告されており、興味のある結果と思われる。今後、この点及びIgG、IgM濃度について検討を予定している。2.膀胱上皮に存在する糖脂質と細菌付着の関係については膀胱上皮由来の培養細胞を用いて糖脂質を抽出し、TLCにて展開後発色させ、幾つかのバンドを得た。これらに付着するE.coliを防射性物質でラベルして検討中である。
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