研究概要 |
1.HPLCによる葉緑素由来のフェオフォルバイト誘導体(PHー1126,λmax650nm)の担癌マウスにおける体内動態の検索では,腫瘍組織内取り込みが優れ,腫瘍内濃度の上限は投与後36時間で,この時間におけるレ-ザ-照射による抗腫瘍効果は最大であった。従って治療開始時間の短縮が可能と考えられた。 2.ヘマトポルフィリン・オリゴマ-(HpO,M.W.=3000,λmax400nm)の各種濃度のCTABミセル溶液と水溶液中における分光学的研究により,短寿命蛍光成分に対する長寿命成分の比から,生体系に類似するミセル溶媒系では,短寿命成分はHpO会合体に由来すると考えられた。また,担癌マウスにおいてHpOは腫瘍内にて会合体の形成下において光化学反応が進行し,さらにレ-ザ-照射により会合体形成が促進するものと考えられた。さらに新しい興味ある成果の1つとして,この形成体の存在はマイクロ波照射によるハイパ-サミア抗腫瘍効果に増強効果をもたらした。さらに,アドリアマイシンのごとき抗癌剤では,光力学的治療との間で併用効果の増強が期待できた。 3.Alフタロシアニン(AlーPC,λmax675nm)とHPDの金蒸気レ-ザ-(628nm)照射による,担癌マウスにおける光力学的抗腫瘍効果の点では有意差がみられなかったが,チタンサファイアレ-ザ-(675nm)照射では前者に有意の高い抗腫瘍効果が認められた。さらにAlーPCはHPDに比し皮膚よりの排出が良好で,可視光線照射では両者間に差はみられなかったが,長波長紫外線照射による皮膚反応は軽度であった。これまでの研究結果はわれわれが検討しえた新しい光感受性物質のなかで,HPDに代りうる可能性が最も高いものの1つと考えられた。
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