研究課題
1.軟骨基質初期石灰化部位における結晶の発育にともなう超微細構造の観察において、軟骨基質の基質小胞内に結晶が出現し、発育する過程で結晶成長と軟骨基質との間に密接な関係が存在することが明らかとなった。さらに未脱灰超薄切片および液体窒素を用いた急速凍結置換法を用いた未脱灰超薄切片による、加速電圧200KVの透過電顕を用いた原子配列レベルでの観察では、軟骨内骨化の初期石灰化部位の結晶には多数の構造欠陥が存在することが観察された。2.軟骨細胞及び軟骨基質を抗原としたmonoclonal抗体の作製および免疫組織学的観察においては、ラット下顎頭軟骨のホモジネ-トを抗原として、BalbCマウスを免疫し、その脾細胞とNSー1細胞とを融合させ、ハイブリド-マを作成した。その結果、下顎頭軟骨にのみ特異的に反応する単クロ-ン抗体は得られなかったが、下顎頭軟骨の線維層の膠原線維と反応する抗体や軟骨細胞に弱く反応する抗体、および軟骨内骨化に関与する骨芽細胞や骨基質などと反応する抗体が得られた。また、typeI、IIコラ-ゲンに対する抗体を用いて酵素抗体法、蛍光抗体法による免疫組織およびプロテインAゴ-ルド法による免疫電顕による観察では軟骨膜や下顎頭線維層および骨基質の膠原線維はtypeIコラ-ゲンの抗体と反応し、typeIIコラ-ゲンに対する抗体では長時間のヒアルロニダ-ゼ処理を行なった下顎頭軟骨にのみ軟骨基質の線維に弱い反応が観察された。3.軟骨内骨化に関与する毛細血管の免疫組織学的観察では、軟骨小腔が開放される部位において毛細血管が骨髄腔内の細胞とともに小腔内に侵入するが、このような部位における毛細血管の壁の一部は有窓性であり、また基底膜成分であるtypeIVコラ-ゲンやラミニンに対する抗体で、毛細血管の周囲の基底膜が免疫組織学的に染色された。