研究概要 |
1.須田は傍骨膜注射によって局所麻酔を行う際、局所麻酔剤中に含まれる血管収縮剤の役割に注目し、その歯髄麻酔効果を検索した。すなわち、成熟したネコの上顎犬歯と眼窩下神経を用い、1:40,000または1:80,000エピネフリン溶液を根尖相当部に注射投与した。エピネフリンの歯髄麻酔効果は、眼窩下神経を電気刺激したときに犬歯から記録される逆行性誘発電位から観察した。その結果、エピネフリン自体が歯髄に対して麻酔効果を有することが確認された。その効果は歯髄の貧血に基づく酸素供給障害によるものと考えられ、作用部位は根尖歯周組織と歯髄内の両者と推定された。したがって、局所麻酔の効果を考えるとき、添加されている血管収縮剤の影響も考慮すべきことが明らかとなった。 2.砂田は炎症歯髄の局所麻酔法に関する臨床的研究を行い、正常歯髄と炎症歯髄の麻酔を比較検討した。その結果、麻酔に必要な用量や待期時間については個体差が大きく、両者間に明瞭な差異を見出し得なかった。しかしながら、歯髄炎のために十分な麻酔効果が得られない症例については、歯周靱帯内注射麻酔法が極めて有効であることが見出された。 3.砂川はネコを用い、下歯槽神経電気刺激に対してスパイク応答を示す頚髄ニュ-ロンの活動性の記録を継続して行い、その特性を詳細に追求した。その結果、これらのニュ-ロンは10msecより短い潜時を有するもの(Fーtype neuron,n=60)と長い潜時を有するもの(Sーtype neuron,n=101)とに分類された。また、下顎犬歯に髄の電気刺激にも応答したものが11例存在し、これらは全てSーtype neuronであった。以上の結果から、歯髄炎をはじめとする歯科疾患と肩凝りや頚の痛みなどの頚部症状との関連性を考察し、歯髄炎などによる異常刺激は、頚髄ニュ-ロンの興奮性を修飾することが推定された。
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