研究概要 |
〔目的〕カルパインは細胞内Ca^<2+>依存性システインプロテア-ゼで,カルパスタチンはその内因性特異インヒビタ-である。両者の遺伝子発現の動態を遺伝子DNA,mRNA及びタンパク質レベルで解析する技術を開発し,これらを臨床検査として実用化する基礎研究を行い,各種患者についての新しい病因病態情報を集収することが本研究の目的である。 〔経過および成果の概要〕ヒト型のカルパインI,II及びカルパスタチン遺伝子を単離し,各遺伝子に対する特異的cDNAプロ-ブを作成した。また、遺伝子構造と機能の関係を詳細に研究し,カルパインI,IIの大サブユニット及びカルパスタチンの機能ドメインに特徴的なアミノ酸配列部位を化学合成し,これらオリゴペプチドを抗原として,それぞれに対する高度特異的モノクロ-ナル抗体を得た。これら抗体を用い,各組織及び疾患におけるカルパインーカルパスタチンの分布、変動を探るサンドイッチ方式のELISA測定系を確立した。造血系細胞及び神経系細胞における各因子の発現をmRNA,タンパク質,酵素活性の各レベルで解析した結果,HTLVーI感染によりカルパインII遺伝子がトランスに活性化されることが判明した。遺伝子DNA上の転写制御領域については現在研究中である。また、他の病態疾患との関連性についても研究を進める必要がある。これら主研究に付随して,カルパスタチンは細胞内でリン酸化されるタンパク質であること,カルパインの一部は細胞膜と結合することなども明らかとなった。さらにカルパイン特異的インヒビタ-及び合成カルパスタチンペプチドを細胞内に導入することにも成功した。今後,諸条件を検討し,カルパインーカルパスタチン系の生理的意義を検索していくことも重要な課題である。
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