研究課題/領域番号 |
63440086
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
池田 日出男 東京大学, 医科学研究所, 教授 (10012775)
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研究分担者 |
増田 明子 東京大学, 医科学研究所, 教務職員 (90134626)
本田 正明 東京大学, 医科学研究所, 助手 (20012742)
梨本 裕子 東京大学, 医科学研究所, 助手 (80012730)
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キーワード | 遺伝的組換え / 相同的組換え / 非相同的組換え / 遺伝子ターゲッティング / DNAジャイレース / DNAトポイソメラーゼII / DNA鎖転移酵素 / トランスポゾン |
研究概要 |
動物細胞の遺伝的組換えの研究は、遺伝子疾患や癌化の原因となる遺伝子の再編機構を明らかにする上で重要であり、また動物細胞レベルでの遺伝子操作である遺伝子ターゲッティングのための基礎的資料を得る上でも重要である。我々は、動物細胞での研究の参考とするために、大腸菌における組換えの研究を行った。大腸菌DNAジャイレースが非相同的組換えに働くことはすでに報告したが、実際に細胞内で働いているかどうかを調べた。粘菌より分離したプラスミドを大腸菌に導入すると、非常に高頻度に欠矢を起こすこと、さらにこのプラスミドを大腸菌DNAジャイレースの温度感受性変異株に移すと欠矢が起きなくなることを見出し、DNAジャイレースが細胞内で働いていることを示した。次に動物細胞における非相同的組換えについて調べるために、コウシ胸腺よりDNAジャイレース類縁酵素であるDNAトポイソメラーゼIIを分離し、この酵素が試験管内で非相同的組換えを行うことを示し、この組換えが大腸菌から高等動物まで共通の機構で行われていることを明らかにした。さらに、動物細胞内における非相同的組換えの機構を解析するために新らしいベクター系を開発した。この系で得られた挿入変異の構造を解析したところ、αーサテライトと呼ばれる反復配列がトランスポゾン様の転移を起こしていることを見出した。また、哺乳動物細胞における相同的組換えの機構を解析するために、コウシ胸腺の抽出液中に相同的組換えの酵素の活性を検出した。その酵素は、見かけ上の分子量35KDaの蛋白質で、ATPやMg^<++>を要求しないDNA鎖転移反応を行う。このような酵素が哺乳動物細胞より精製されたのははじめてであり、これに基づいて動物細胞の相同的組換えの研究を行うことができるようになった。また、最近盛んになってきた遺伝子ターゲッティングの実験にも応用できると思われる。
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