• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

1990 年度 実績報告書

環境変化に対する細胞の適応応答の研究ー大腸菌リン酸レギュロンの調節機構ー

研究課題

研究課題/領域番号 63440087
研究機関大阪大学

研究代表者

中田 篤男  大阪大学, 微生物病研究所, 教授 (80029769)

研究分担者 雨村 光子  大阪大学微生物病研究所, 教務職員 (80159467)
牧野 耕三  大阪大学微生物病研究所, 助手 (20181620)
品川 日出夫  大阪大学微生物病研究所, 助教授 (40029799)
キーワード大腸菌 / 遺伝子発現制御 / リン酸レギュロン / 感応レギュレ-タ- / 二因子制御系 / ヒスチジン・蛋白・キナ-ゼ / 転写活性化因子 / cross talk
研究概要

本研究は,大腸菌のリン酸レギュロンを研究対象として,生物が外界あるいは環境の刺激や変化を感知し,そのシグナルを細胞質内で伝達して遺伝子発現を制御する機構を分子レベルで解明することを目的としている.リン酸レギュロンは培地中の無機リン酸濃度が低下すると発現して,乏しいリン酸の効率的な利用に働くと考えられる.遺伝学解析から<pst>___ーー<phoU>___ーオペロンの産物がリン酸濃度を感知してそのシグナルを感応レギュレ-タ-であるPhoRに伝達すると考えられる.昨年度までの研究で,PhoRはヒスチジン・蛋白・キナ-ゼでPhoBをリン酸化し,リン酸化PhoBが転写活性化因子としてリン酸レギュロン遺伝子の転写をアクチベ-トすることを証明した.
本年度は,<phoR>___ー以外の遺伝子(<phoM>___ー)による発現の促進(cross talk)と,リン酸欠乏以外の生理学的要因による発現の機構を解析した.(1)PhoRが機能を失うとリン酸レギュロンは<phoM>___ーに依存して構成的に発現する.また,<phoM>___ー遺伝子の上流の遺伝子(<orf2>___ー)は<phoB>___ーと相同性が高く,<PhoM>___ー/<ORF2>___ーもPhoR/PhoBと同様,二因子制御系の調節蛋白であると考えられるので,PhoMによるPhoBおよびORF2のリン酸化を検討した.<lacZ>___ーー<phoM>___ーキメラ遺伝子を作成し(PhoMが膜蛋白であるため可溶化するため),PhoMの機能を保持したキメラ遺伝子を選んで検討した.PhoMもPhoRと同様,自己リン酸化の機能をもち,ORF2もPhoBもリン酸化することを証明した.PhoM/PhoMーORF2によって制御される遺伝子は明らかでない.(2)<phoR>___ーあるいは<phoM>___ーのクロ-ニングを試み,そのどちらでもない遺伝子でリン酸レギュロンを発現させる遺伝子を分離した.この遺伝子は<ackA>___ー(アセテ-トキナ-ゼ)で,細胞内のATP含量が同時に上昇しており,多コピ-プラズミッド上で<ackA>___ーの高発現によってこの現象が起こると考えられる.
以上,リン酸レギュロンはPhoR/PhoBによる制御だけでなく,PhoMによるcross talkや他の生理学的要因によっても発現して,ヒトの腸内という本来的にリン酸の乏しい環境で生育するしくみが大腸菌には存在していると考えられる.

  • 研究成果

    (4件)

すべて その他

すべて 文献書誌 (4件)

  • [文献書誌] Yamada,M.,K.Makino,H.Shinagawa,and A.Nakata.: "Regulation of the phosphate regulon of Escherichia coli:properties of phoR deletion mutants and subcellular localization of PhoR protein." Mol.Gen.Genet.220. 366-372 (1990)

  • [文献書誌] Lee,T.ーY.,K.Makino,H.Shinagawa,and A.Nakata.: "Overーproduction of acetate kinase activates the phosphate regulon in the absence of the phoR and phoM functions in Escherichia coli." J.Bacteriol.172. 2245-2249 (1990)

  • [文献書誌] Amemura,M.,K.Maino,H.Shinagawa,and A.Nakata.: "Cross talk to the phosphate regulon of Escherichia coli by PhoM protein:PhoM is a histidine protein kinase and catalyzes phosphorylation of PhoB and PhoMーOpen reading frame 2." J.Bacteriol.172. 6300-6307 (1990)

  • [文献書誌] Kasahara,M.,K.Makino,M.Amemura,A.Nakata,and H.Shinagawa.: "Dual regulation of the ugp operon by phosphate and carbon starvation at two interspaced promoter." J.Bacteriol.(1991)

URL: 

公開日: 1993-08-11   更新日: 2016-04-21  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi