研究課題/領域番号 |
63440088
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
安楽 泰宏 東京大学, 理学部, 教授 (20012643)
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研究分担者 |
飯田 秀利 岡崎国立共同研究機構, 基礎生物学研究所, 助手 (70124435)
大矢 禎一 東京大学, 理学部, 助手 (20183767)
中野 明彦 東京大学, 理学部, 講師 (90142140)
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キーワード | カルシウムイオン / 細胞内遊離Ca^<2+>濃度 / 細胞増殖 / 酵母 / α因子 |
研究概要 |
酵母細胞内の遊離Ca^<2+>濃度と分布を解析するシステムとして、ニコン蛍光顕微鏡マイクロフォトFXと浜松ホトニクス・アルガスー100を中心とした顕微分光システムを開発した。また、Ca^<2+>特異的蛍光試薬としてfura-2を用い、これを電気パルス法で効率よく酵母細胞内に注入する条件を確立した。このシステムと条件を用い、酵母細胞質の遊離Ca^<2+>濃度は約100nMであり、液胞内の遊離Ca^<2+>濃度は約800nMであることを明らかにした。次に、酵母の性接合因子であるα因子を添加してα接合型細胞をG_1期停止状態に誘導した時の細胞質遊離Ca^<2+>濃度を測定した。α因子を作用させると3分以内に細胞質遊離Ca^<2+>濃度は平均2〜4倍に増加し、作用後1〜3時間の間には約2倍の高い濃度が維持された。α因子を除去するとG_1停止が解除され、細胞質遊離Ca^<2+>濃度は元のレベルに戻った。この結果はα因子による細胞増殖の停止がCa^<2+>シグナルの派生と密接に関連していることを示したものである。さらに、Ca^<2+>除去による酵母細胞の増殖制御系を開発した。カルシウムイオノフォアA23187とカルシウムキレート剤EGTAを含む合成培地中で22℃の培養を行うと増殖が完全に停止することを見出した。この時、細胞内遊離Ca^<2+>濃度は10nMの低いレベルに低下し、芽をもつ細胞の割合が一過的に減少すること、これと同調してG_1期のDNAをもつ細胞の割合が一過的に増加することを明らかにした。この事実は、細胞内遊離Ca^<2+>濃度の低下が細胞のG_1期停止を指令していることを示している。さらに同条件で16ー20時間培養を続けると、細胞の大部分はG_2/M期のDNAをもつようになるが、出芽は依然として制限を受けていることが明らかとなった。この結果は、本来同調的に起るはずのDNA合成と出芽が細胞内遊離Ca^<2+>濃度の低下により非同調的になることを示し、細胞増殖の調節にCa^<2+>が重要な役割を担っていることが明らかとなった。
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