研究課題/領域番号 |
63440089
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
渡 仲三 名古屋市立大学, 医学部, 教授 (40079976)
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研究分担者 |
金井 美晴 名古屋市立大学, 医学部, 助手 (70094365)
堀田 康明 名古屋市立大学, 医学部, 講師 (90117854)
馬渕 良生 名古屋市立大学, 医学部, 助教授 (80106228)
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キーワード | 膵臓 / 腺房細胞 / カドミウム摂取細胞 / ビタミンA貯蔵細胞 / 脂質貯蔵細胞系 / 膵島細胞 / 超微形態 |
研究概要 |
われわれの研究室では、永年に亘って、ヒトおよび各種脊椎動物の膵組織の超微形態について研究を続けているが、本年は、(1)ストレプトソトシン(以下STZ)をラットに投与して、膵傷害を光顕ならびに電顕で観察し、膵の内・外分泌部の変化を追求すると共に、これに漢方薬甘草のエキス成分であるグリチルリチンという薬剤を投与してSTZによる膵傷害の修復についても検索した。STZは糖尿病発症剤であり、これを投与して6カ月後のラットの膵組織を観察すると、まず膵島細胞の内特に、インスリン分泌のB細胞が破壊され、糖尿病となり血糖値が上昇する。また、膵の外分泌部も傷害を受けて、膵外分泌細胞質内に細胞の部分壊死である自家食胞が出現すると共に、細胞基底側に、多数の脂質滴が出現する。また導管系の上皮細胞も傷害を受けて二次ライソゾ-ムや脂質滴が出現する。さらに興味ある所見は、膵の間質結合組織内に、STZ投与によって、脂質滴を保有した「脂質貯蔵細胞」が出現することである。この細胞については1982年以来研究し、ビタミンA投与の場合にも出現し、「ビタミンA貯蔵細胞」と報告した。またカドミウム投与の場合にも出現し、「カドミウム貯蔵細胞」と命名されたが、これらの細胞は体外から進入した毒物の解毒に関係する細胞であり、グリチルリチンの投与によって、STZ投与による膵傷害が改善されると共に、この毒物の解毒のためにこれらの「脂質貯蔵細胞」が増加し、さらに大食細胞の活発化と共に、脂質貯蔵細胞と大食細胞が接触して互いに情報交換を行い、広義の生体防御機構が強まることが解明された。これらの「ビタミンA貯蔵細胞」や「カドミウム貯蔵細胞」などと命名された脂質滴を保有する間葉系由来の細胞をまとめて「脂質貯蔵細胞系」と呼称することをわれわれは提案した。今後さらに種々の実験を重ねて、この「脂質貯蔵細胞系」の形態と機能について研究して行きたい。
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