研究課題
昭和60年、新潟県中頚城郡三和村の宮崎家から鉄眼版一切経を寄贈されて以来、整理を進め、ほどなく学術研究上、極めて貴重な全巻揃いであることが確認されたため、63年10月、一般研究C「黄檗鉄眼版一切経の基礎調査研究」(研究代表者 松野純孝 研究課題番号62510014)の助成を得ることができ、63年3月研究成果として『黄檗鉄眼版一切経目録』を出版することができた。本研究はこの目録にもとづいて史料を収拾し、仏教史的考察をすることを目的とした。本年度は、まず鉄眼版に付属する刊記をすべて集成することを終了することができた。この結果、刊記は寛文から延宝までの1288点あることが確認された。同時に、これらの刊記はすべてカード化することができた。年代・寄進者の国別に分類され、現在、整理中ではあるが鉄眼による勧進の地域は圧倒的に大坂中心の上方が大きく占めて、西高東低ついで出身地の肥後周辺と江戸であった。今後さらに分析を進め、寄進者の階層・金額などを含めて、鉄眼の年譜を増補しながら、検討を加えていきたい。また、鉄眼版関係史料の収集のため、全員で京都府宇治市黄檗山万福寺に出張し、『大蔵経請去層牒』(全1冊)、『全蔵斬請千字朱点簿』(全21冊)の半ばまで撮影調査することができた。これらは従来注意されなかった史料で、鉄眼版の流布状態を考察できる。収集された史料は、今年度、購入したリーダー・プリンターによって逐次、速やかに紙焼きされ、刊記集成と関係史料集成とにまとめることができた。これらは今年度中に、整理することはできたが、余りにも膨大な資料群になったため、分析することが追いつかず、検討・考察は、次年度の継続課題としたい。さらに学内に移建された八角輪蔵の実測調査も実施され、実測図の作成が準備されている。