研究概要 |
最終年度にあたる本年度は、研究のとりまとめを行なった。 1.古代信仰・祭祀等の研究を基礎づける史料的・実証的基盤を構築するために、従来の宗教研究等の学説を収集・検討・整理する作業を前年度にひきつづき行なった。その作業を継続した結果得られた知見を集大成し、『世界宗教事典』の翻訳・刊行を行なったが、とくに巻末索引整備の過程で、信仰・祭祀にかかわる基礎的諸概念の訳語統一,内容検討を細密に行なった。 2.古代固有信仰にかかわる周辺的事象について、若干の研究協力者をまじえて共同研究を行なった。その一つは、仏教説話の中で古代の力三信仰と外来思想との葛藤が表現されているさまを明らかにし、『日本霊異記』の世界像の問題として報告書に記載した。また、古代習俗の問題としては、日本語音声と祭祀の心性とのかかわりを、リズム論の観点から考察した。さらに、天台本覚思想の日本的性格についても検討を加えた。 3.近世国学の神話研究を、主に本居宣長の著作を手がかりに再検討した。とくに、日本語の文法・音韻など、「もの」にかかわる宣長の言説を考察し、日本の復古思想の中で古代の習俗が持つ意味を明らかにした。その結果は、著書『本居宣長ー言葉と雅び』で発表された。 4.神話の構造・発生を、主として物語論の観点から考察した。この中で、主人公論、物語の時間構造,場所の問題などについて、新たな知見が示された。編著『御伽草子ー物語・思想・絵画』の冒頭座談会はその端的なものである。また一部は、菅野「桃太郎の主人公」で発表されている。
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