地方寺院には、中世並びに近世の絵画が什宝として伝来しているが未調査のままであることが多い。それらの中には絵画史上重要と認められる作品が見出される場合がある。従って、特に地方の寺院伝来の絵画調査を実施し、重要作品の発見に努めると同時に、その散佚を防ぎ、中世絵画史に新資料を加えて学会に寄与する必要がある。本研究調査の主たる対象は、中世と近世初期の絵画、特に仏画と水墨画の伝来する地方寺院とする。 三年間に調査を実施した地域は以下の通りである。近畿4府県(和歌山・大阪・奈良・京都)、九州7県(福岡・大分・宮崎・鹿児島・熊本・長崎・佐賀)、東北5県(宮城・岩手・青森・秋田・山形)。なお、他再調査として兵庫・岡山・茨城・神奈川・愛知・静岡・岐阜についても実施した。 上記の調査によって次の画家研究について進展が見られた。式部輝忠、土蔵。また次の作品研究について知見が得られた。愛知県富賀寺蔵三千仏名図、岡山県大聖寺蔵騎馬図、群馬県正覚寺蔵地蔵十王図、山梨県南松院蔵渡唐天神図、奈良県浄照寺蔵式部輝忠筆扇面、大阪府久本寺蔵土蔵筆釈迦三尊図、兵庫県西光寺蔵土蔵筆十二天図、兵庫県浄居寺蔵土蔵筆白衣観音図、愛知県富賀寺蔵土蔵筆北野天神図。 以上の画家、作品研究についてはすでに学術雑誌等に発表済み、またはその予定である。
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