研究課題/領域番号 |
63450009
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
菊竹 淳一 九州大学, 文学部, 助教授 (10000374)
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研究分担者 |
小林 法子 九州大学, 文学部, 助手 (40195798)
平田 寛 九州大学, 文学部, 教授 (00036980)
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キーワード | 東アジア / 李朝時代 / 仏教絵画 / 在銘作品 / 願主の階層性 / 絹本と麻布 / 絵師と絵仏師 |
研究概要 |
日本に現存する李朝時代の仏教絵画は約二百点と推測されるが、その中に制作時期や制作事情を記録した在銘作品が約五十点ほど含まれている。本研究は、これら在銘作品の全容を明らかにすることにより、李朝時代仏教絵画の東アジアにおける美術史上の価値を解明しようとするものである。 本年度の調査件数は二十八点にのぼるが、その中で次のことが明らかとなった。(1)日本に現存する李朝時代の在銘仏教絵画は、十五、十六世紀に集中しており、十七世紀以降の在銘作品はわづかな点数しかない。(2)日本に現存する在銘李朝仏画は絹本著色と麻布著色とに大別でき、前者は小ぶりの作品が多く、後者は大ぶりの作例が多い。(3)絹本著色本の場合は王侯貴族階層が願主となって制作された作品が多く、麻布著色の場合は寺院民衆階層が中心となって描かれた作例が多い。(4)作品の素材の相違は表現技法にも影響を与えており、絹本著色本の彩色は鮮やかで流麗な筆致の作品が多く、麻布著色本の彩色は暗色系でにぶく、渋滞気味の描線をもつ作品が多い。(5)図像は、絹本著色本の場合、中国の宋時代や元時代の仏教絵画に共通する点が多いのに対し、麻布著色本の場合李朝時代に特有のものがしばしば認められ、仏教信仰と土着信仰との交流の結果とも考えられる。(6)在銘李朝仏画の存在を確認するのは中世以来の交易地に多く、李朝仏画が交易品として日本に伝えられたことを示している。(7)十七世紀以降、日本への朝鮮通信使の来訪などにより、日本近世の風景画・人物画などには李朝絵画の影響が多く認められるものの、十五・十六世紀の日本の仏教絵画には、李朝仏画の影響はほとんど認められない。
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