研究概要 |
先天盲開眼者4名(KT,HH,TOM,MO)、脳損傷事例3名(AT,TS,TK)および能性マヒ児1名(KH)と斜視児1名(KI)の協力を得て、それぞれの視・運動系活動ならびにそれに基づく空間認知機能の障害状況とその回復・形成の過程とにつき、3年間にわたって実践的研究を試みてきた。その成果の主なものは、次の通りである。 (1)先天性白内障の手術を受けた2名の開眼者(KTとTOM)については、現在では白杖なしで戸外を歩行できる段階に到達している。事物を視覚的に捉え得る最大距離も拡大してきている。ただし、TOMの場合、透視図的線画の立体視はまだ成立せず、texture gradieutや濃淡のgnadteutも空間認知に有効に働くまでに至っていない。 (2)角膜移植手術を両眼に受けた2名の開眼者(HHとMO)のうち、HHについては外界での歩行行動が当初よりも一層視覚的手がかりに依存するようになったが、MOの場合まだ歩行行動は触覚的手がかりに依存する状態が続いている。定位活動の際の手と眼の協応関係もまだ不十分である。 (3)上記TOM、HHのほかATとKH、KIについては、両眼視機能に関する錬成を試みてきたが、TOM,HHについては開眼手術後の反復堤示により、またATおよびKIの場合はその斜視矯正の手術後に、線画のステレオグラムの両眼立体視が可能になってきた。KHについても同様の傾向が見出されている。ただ、いずれの場合もRDSの両眼立体視はまだ困難である。 (4)脳損傷事例のうち、CO中毒により皮質盲に近い状態と診断された事例(TS)について、その視野障害の構造特性を明らかにすることができ、さらに、事物の線画のうち、複数個並べたものの識別が難しいこと、単一事物の線画でも、45゚以上傾けるともはや識別が困難になることが明らかになった。ひらかなの識別課題でも、この方位依存性が認められる。
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