研究概要 |
本年度は前年度までの日本語日常会話文処理のための理論的研究の成果をふまえ,対話処理システムを具体化するための諸研究がなされた.これらの結果に基づきNENE1号機の作製に入った. 現在作製されているシステムは従行あるような限定された状況で働く受身的な対話システムではなく,積極的に会話に参加してテ-マを展開し,対話の流れに一貫性のある‘自然'な会話ができることを目標としている.このためには解析モジュ-ル,生成モジュ-ルに加えて柔軟な対話管理モジュ-ルを備えている必要がある.解析部分では日常会話において重要な意図や信念を表現する述語要素(終助詞,法助辞など)をも処理できること,日常会話に頻出する構文(倒置,体言止め,省略など)に対処できることが目標となっている.生成部分の特徴は,対話状況を考慮した発話意図の効果的な実現のために適切な文を生成するためのアルゴリズムを持つということである.対話管理に関しては,典型的ないくつかの会話例を作成し,これを実現させうる対話管理モジュ-ルを作製した. 上記システムの作製のためには,種々の対話状況に置かれた人が各発話をどのように認知するかについての知見が不可欠であり,システム化と並行する形で認知心理学的,社会心理学的研究が行われた.社会心理学的研究としては,対話状況における対話者間の認知された地位などが発話及びその認知に及ぼす影響についての実験的,理論的考察が進められた.さらに,対人認知における対話者の特性帰属と行動予測の関係,及び同一個人間の対人認知の時間的変動について実験的研究を行った.さらに,言語の画像表現,画像の言語表現に関する実験を行い,言語的社会的相互作用場面においても重要な情報である画像的世界理解について各種の重要な知見が得られた.
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