本年度は、島根県断酒新生会、広島県断酒連合会、宮城県青葉断酒会に対して実施した断酒行動についての意識調査をコンピュ-タ-を用いて集計した。さらに、上記の断酒会会員のうち、特に活動的なリ-ダ-層を選定し、彼らに対して集中的なインタビュ-調査を行った。 このような本年度の作業の結果、当面の断酒活動に関して以下のような三つの問題点が明らかになった。 まず第一に、断酒会員は医療行政機関との関係において、それらの単なるイエス・マン的存在になりがちな傾向がみられた。したがって、今後断酒会の自主性、主体性をもっと強化する必要がある。そのためには酒害相談等における断酒会会員の問題処理能力を高め、医師や行政機関スタッフからの信頼をこれまで以上に獲得していくことが肝要である。 第二に、断酒会の組織・運営の原理は、原則的には開放性、公開性に基づくとしても、今後の社会状況の変化に応じて、匿名原理をその補助的手段として採用して行く必要性にせまられるであろう。 第三に、断酒会は今後、妻やその他の家族がいない人達、あるいはおってもその人達の協力が得にくい人達に対して、そうした条件を前提とした断酒対策を打ち出す必要がある。 以上のような研究成果を、とりあえず本研究の中間報告というかたちで、『社会学研究』第55号(東北社会学研究会、1990年、2月)に、「今日の断酒会活動における若干の課題」というタイトルでとりまとめ、発表した。
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