研究課題/領域番号 |
63450029
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研究機関 | 常磐大学 |
研究代表者 |
後藤 和彦 常磐大学, 人間科学部, 教授 (20162141)
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研究分担者 |
三本松 政之 文教大学, 人間科学部, 専任講師 (10196339)
柄澤 行雄 常磐大学, 人間科学部, 助教授 (70161255)
常木 暎生 常磐大学, 人間科学部, 教授 (90163857)
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キーワード | 贈答行動 / おくりもの / ギフト / 互酬性 / 日本人の人間関係 |
研究概要 |
1.本年度は当研究の第一年目に当たる。そのため、本年度の研究目標を次年度に計画している本格的な調査の準備期間と定め、日本人の贈答行動を捉えるための仮説的理論枠組の構築と調査フレームの作成に係わる研究作業を主に行った。具体的には、(1)贈答行動・贈答文化に関する既な研究の収集(目録化)と整理、(2)茨城・新潟両者での贈答慣行についての聴きとり調査(8名)、(3)それらに基づく研究会(今宿研究会3回を含む)をねるとともに、(4)贈答に関わる民俗語彙の収集整理にも着手した。 2.以上のことから、日本人の伝統的な贈答行動の変化に関して以下の点が仮説として明らかになった。(1)贈答主体--家を単位にするものから個人を単位とするものの増加、(2)贈り手と受け手の関係--地域、血縁、親分子分、取引等の関係に加え、親しい個人間・友人間の関係の増加、(3)贈答の契機の増加と多様化、(4)贈答の目的--儀礼的、相互扶助的、手段的な目的に加え、贈答それ自体を楽しむ即自的、表出的・遊び的なものが増える、(5)贈答品の内容の多様化、(6)包装の意味が大きくなる、(7)贈り手と受け手との間に互酬性が成立する時間の短縮化、(8)授受方法--主体間の直接的な授受からその間に第三者機関が介在する場合が増加し、それに伴ない贈答が市場メカニズムの中に一層とり込まれてきている、(9)贈答をめぐる規範・秩序が従来に比して曖昧化してきている。またこうした変化をもたらした社会的要因・背景として、経済的豊かさの実現と生活の高附加価値化傾向、地理的移動の高まり、社会的組帯の希薄化、などが考えられる。 3.次年度は、以上の仮設を更に精緻化したうえで、今日の贈答行動の実態を捉えるための詳細な調査を一年間に亘り実施し、日本人の贈答行動の特質とその変化についての理論構築を図ってゆく。
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