昭和63年度は、研究初年度であるため、関連論文の中から基本的文献を数度の研究会で検討しながら、同時に研究目的である地域社会の実証的研究を行うため、まず全国の新しいメディア政策の計画あるいは展開しつつある地域を選定し、とりわけ国の政策と連動しながら自治体や当該地域でのとりくみを予備調査することによって、われわれの共通の現実認識をもつことにした。そのため、申請時に挙げた地域よりもはるかに多くの現地予備調査をすることにより、全国的な新しいメディア政策の傾向を把握することができた。予備調査を行った地域としては、大分県大山市、盛岡市、広島市、唐津市、鹿児島県出水町、佐賀県白石町、香川県寒川町、岐阜県国府町、札幌市、函館市などがあり、かなり広範な地域を主として聴取りと現地資料収集によって調査した。 国の情報化政策は日増しに急がれ、現実化してゆく傾向を見てとれるが、しかし、テクノピア構想、ニューメディア・コミュニティ構想、グリーントピア構想などの進捗状況は必ずしも全国的に足並みがそろっているわけではない。そうした中で比較的先進的な地域と思われる箇所を選定し、予備調査を行ったが、各省庁の政策の違いや地域や自治体の取組み体制、熱意の違いが現状ではバラツキのみが顕著にみられる状況を呈している。したがって新しいメディア政策に対する地域諸団体や住民のコンセンサス形成が、いかなるプロセスで達成されているのかといった領域までは今年度足を踏み入れることが困難であった。 数度の研究会や予備調査、資料収集などから得た知見について、今年度は研究代表者が「中央大学文学部紀要」に論文を掲載することにした。
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