本年度も昨年度にひきつづき占領軍総司令部の社会教育政策の成立・展開過程について、中央レヴェルの政策研究および地方とくに東海・岐阜県段階での政策浸透の研究に焦点をあて分析を行った。同研究の経過と成果の概要は以下のとおりである。 第1に占領軍総司令部・民間情報教育局(GHQ/SCAP・CI&E)の社会教育政策の成立・展開の実態について、国立国会図書館等の占領文書および文部省・民間関係団体等の関係資料にもとづいて実証的分析を行った。研究の主要な成果は、占領軍の基本的政策としての日本の「非軍事化・民主化」理念が、戦前日本の社会教育の民主的成果を継承しつつ、かつアメリカ進歩主義成人教育の伝統を範として具体化されていった経緯が実証的に分析できたことである。また占領軍社会教育政策の根幹が社会教育団体の自由と自律性、社会教育行政の権限の判約、社会教育行政の分権化等に置かれ、これらの諸点が社会教育法制定、公民館設置等の諸施策にかなりの程度貫ぬかれたことが解明できた。 第2に上述の占領軍社会教育政策が地方に浸透・定着していった動態について、占領軍地方軍政部・県・市町村、民間社会教育団体等の資料および関係者の面接調査等にもとづいて分析・検討した。本年度も昨年度にひきつづき岐阜県の占領期社会教育の実体把握にとりくみ、飛騨地方の青年団の組織化、公民館の設置等、小学校教員を指導者層の中心とする戦後初期の地域社会教育が成立していった経過と背景について明らかにすることができた。そうした戦後初期社会教育の基本的な枠組づくりに、占領軍地方軍政部による直接ないしは間接的な社会教育の考え方と方法技術等の指導・示唆が一定の影響力を発揮したことをも、上記の各種の資料により実証することができた点も貴重な研究成果であった。
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