研究課題
視覚障害児教育の中では、視力が0.04以下の児童・生徒は、全盲と弱視の境界的な視力であるが故に、従来、その教育にあたっては、普通文字を使用するのか、点字を使用するのか、あるいはまた両方を併用するのか、ということが教育の現場で常に現実の大きな問題となっている。本研究では、このような現実的な問題に対して、全盲と弱視の境界視力をもつ児童・生徒の読み・書きの効果的な指導法を開発することを意図して、彼らの読み・書きに関する個人的条件と常用文字との関係、あるいは個人的条件を加味した文字指導や教育機器の導入について、どうあるべきかを明らかにすることを目的として、研究を進めている。そこで、初年の本年度は、(1)盲・弱境界視力児の普通文字と点字の読み・書きの習慣に関する実態把握調査、(2)境界視力児の読み・書きについての事例的研究の資料収集とその分析、また、(3)残存視覚のための文字情報処理という観点からの文献的研究等を行った。これまでの研究進行の状況は、盲・弱境界視力児の普通文字と点字の読み・書きの実態について、一部分析を終了した。しかし更に、視力と使用文字との関係、視力と読速度の関係、視覚特性と読書の関係、文字の外的属性と読みとの関係、CCTVや弱視レンズ使用のときの視力と読速度の関係等、を明らかにする調査・実験的研究が必要であることが示された。また、盲・弱の境界視力児の読み・書きについて行われた事例的研究の分析から、境界視力児の読み・書きについては、個人的条件を加味した文字指導や教育機器の導入が重要であることが指摘され、更に、耳からの情報入手の点も考慮した指導が必要であることも指摘された。また、通常の方法では情報処理に困難をきたす弱視者の文字情報伝達に関する文献的研究では、弱視者の視覚特性や文字の外的な刺激の属性などが、情報処理に大きな意味をもっていることが明らかにされた。
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