研究課題
本年度は、全盲と弱視の境界的な視力をもつ子供の読み書きについて、その個人的条件と常用文字との関係を、次のような3種類の調査・検査を実施して検討を行った。(1)本年度の研究においても、昨年度に引き続き全盲と弱視の間の境界的な視力を有する低視力児の読み書きに関する補足的な諸実態調査を行った。この調査では、弱視学級や盲学校に在籍する低視力児の読み書きについて、教育的現実からみた場合、どのような状況にあり、またどのような問題があるのかを、子供の視覚障害の実態と関連させて検討した。この調査は面接法により主として担当教師から、その情報を得た。(2)全盲と弱視の境界的な視力を有する低視力児の読み書きについて、視力と読書力がどのように関連しているのかを調べるために、読速度テストと読書力テスト等を実施した。読速度テストは、時間制限法によるランダムな仮名文字読みのテストと文脈のある文章読みのテストである。また、読書力テストは作業制限法により漢字、表記・文法、読解、語彙など国語力を調べるテストである。(3)対象とした低視力児に対して実際に視力測定を実施した。視力は標準的なランドルト環を使用して遠・近距離視力(矯正視力)を測定し、必要に応じてディスプレ-上での視力測定も行った。現在、これまでに実施してきた調査・検査について、その結果の分析・整理を進めているところであるが、次のような幾つかの観点を考慮して検討を行っている。1)読み書きについて教育的観点からみた場合、問題となるのはどのような低視力の子供たちかの他面的な検討、2)読速度と視力の関係、3)読速度と知能・読書力の関係、4)読書力と知能の関係、5)視覚特性と読速度の関係など。それらの結果については、次年度の最終報告書にまとめて報告したいと考えている。