1.埋墓・詣墓の区画調査を終え、区画見取図と現世帯との対象一覧表を作成した。その結果、本家分家の同族関係や家格差による占地をうかがわせる分布的特色はほとんど見出せないことが確認できた。また、過去帳・宗旨改帳・墓籍簿等と詣墓石塔銘との照合から、詣墓区画の具体的継承が強固な家筋観念によってはいないことが明らかになりつつある。 2.家族関係資料の整理と聞取りから、現世帯の家族類型、判明する限りでの系譜関係、古い家筋などを明らかにした。その結果と1の整理結果との対比から、庶民における家筋観念の形成と基層の親族構造との相互関係の総合的考察が可能となった。この考察をすすめることにより、両墓制の機能についても何らかの新しい知見がもたらされると予想される。 3.八月一杯に連続的に行われる盆行事の観察を今年度でほぼ終え、村に関わる祖霊を村全体で供養するという祖先供養観の特色が、どの段階においても確認できた。また、盆行事の遂行にあたって、年齢階梯による男性の組織(元老会・中老会)だけでなく、女性の組織(念仏ばあさん)も必須の重要な役割を担っていること、寺が村人の結集の中核機能の中核機能を果たしていることが明らかになった。 4.埋墓周辺の経塚遺跡についての新たな知見が得られ、墓地・寺・神社の分布、精霊迎え、送りの順路、オハケさんの場所などとあわせて、島内祭祀空間の配置が重要な意味をもつことが明らかになった。
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