研究課題/領域番号 |
63450051
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
長谷川 博隆 名古屋大学, 文学部, 教授 (50022364)
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研究分担者 |
砂田 徹 名古屋大学, 文学部, 助手 (10206576)
土岐 正策 名古屋外国語大学, 助教授 (20197859)
國原 吉之助 名古屋大学, 文学部, 教授 (10022344)
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キーワード | 自殺 / 墓碑銘 / 死と詩人 / 殉教者行伝 / 政治的殺人 / ローマ人 |
研究概要 |
本年度は、各担当者が個別的に、それぞれの分担分野での研究史を整理するとともに、基本史料の翻訳と読解を行ない、次年度以降の研究のための、「死」をめぐる学会状況と史料状況の把握を課題とした。その結果、わずかながらではあるが、次のような知見と見通しがえられたと思われる。 まず、長谷川博隆は、ローマ人の死生観の独自性を明らかにすべく、共和政末期の政治家の死、それもとりわけ自殺という問題に注目しようとしている。國原吉之助は、文学作品のなかでも詩を取り上げ、叙情派詩人のプロペルティウスと理性派詩人であるルクレティウスとが等しく死のイメージにとらわれているが、その相違はどのような点にあるのか比較検討しようとしている。また、土岐正策は、間もなく出版予定の『殉教者行伝』の翻訳を通じて、キリスト教が入ることにより、ローマ人の間では、どのような苦難のもとでも自殺をしないという特徴が見られるようになったのではないか、という見通しを得るにいたった。砂田徹は、一種の非常事態宣言である「元老院最終決議」の検討により、共和政末期の政治的殺人をローマ共和政の制度的特質から説明しようと努めたが、ローマ社会の変質との関わりは課題として残された。 先にものべたように、本年度はもっぱら個別的に研究をすすめてきた。今後は、担当者相互の関わりを考慮しながらそれぞれの研究を深めていくとともに、新しいメンバーの参加をも含めて研究領域をさらに広げ(例えば長谷川博隆は、墓碑銘、墓所、葬儀の問題にもとりくむ予定)、ローマ人の「死」を総合的にとらえていきたい。
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