研究課題/領域番号 |
63450051
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
長谷川 博隆 名古屋大学, 文学部, 教授 (50022364)
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研究分担者 |
砂田 徹 名古屋大学, 文学部, 助手 (10206576)
田村 孝 名古屋短期大学, 助教授 (80179902)
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キーワード | ロ-マ人 / イマ-ギネ-ス / 墓所 / 埋葬 / カエサル / ポンペイウス / 元老院最終決議 / 政治的殺人 |
研究概要 |
昭和63年度に行なった研究史の整理および史料の翻訳といった基礎作業をふまえて、平成元年度は次のような知見と見通しがえられた。長谷川博隆は大きな枠組みの中での仕事としては、死と国家とのかかわりの問題を検討しており、個別的な仕事としてはimaginesの問題にメスを入れつつある。前者は、ロ-マ人の「死」「葬儀」「埋葬」「祖先崇拝」に国家がどのように関与したかということである。とくに葬儀においては、国葬は勿論のこと、通常の名門の人の葬儀にも国家がさまざまな形で関わりをもったことが明らかにとなった。また葬儀/墓所についても、ロ-マ法上の規定と現実との交差するところに視点を据えて、検討中である。一方、imaginesの問題については、ロ-マ史・ロ-マ法・美術史等の諸研究を参照しながら、以下の4点にわたる問題認定をおこない、それぞれについて若干の見通しをえている。1)iusとしてのimaginesとノ-ビリタ-スとの関係、2)祖先崇拝との関連、3)皇帝崇拝とどう連なるかという問題、4)相続、とりわけ女性が結婚するときimaginesはどうなるのかという問題。また田村孝は、政治権力をめぐって貴族・有力者が互いにしのぎを削った共和政末期のロ-マにおいて、一方の要人が死亡した場合に、その権力がいかにして継承されたのかをその時々の社会的情勢と絡めて考察しつつある。砂田徹は「元老院最終決議」の分析を中心に、そのような非常事態宣言(政治的殺人)を含めた一切の警察権力を持たなかった共和政ロ-マの制度的・社会的特質と、「元老院最終決議」という形でついにそれは必要とするにいたった共和政末期におけるロ-マ社会の変質とを考察しつつある。 このような成果をもとに最終年度にあたる平成2年度は、これまでの分担者を中心として「死」をめぐる研究の総合化をめざすが、その際さらに新しい研究者(ロ-マ史家、ロ-マ文学者)の参加も予定している。
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