研究概要 |
1.北海道伊達市有珠10遺跡の発掘調査 文部省科学研究費(昭和60年・61年:解剖学部門,昭和62年:人類学部門)の交付を受けて実施してきた有珠10遺跡の発掘調査を継続した。2ケ年の発掘で,新たに13ケ所の墓を検出した。続縄文時代恵山期の墓10ケ所の他,これまで本遺跡では未発見であった縄文時代晩期の墓3ケ所も、合わせて検出することができた。 続縄文時代恵山期の墓は,改葬されたものが多く,これは,縄文時代晩期の墓にも認められた。縄文時代の墓では,人骨に抜歯があり,オオツタノハ製貝輪の装着が認められ,また,続縄文時代恵山文化期の墓においても南海産貝製品の副葬が認められるなど,本州縄文・弥生文化の影響が,これまで考えられてきた以上に強いものであることが明らかになった。 2.出土遺物・人骨の研究 貝製品や骨角器には,本州文化の影響が認められた。特に,オオツタノハやイモガイなで,南海産の貝製品については,西日本などの地域からの伝播の可能性が考えられた。 出土人骨は,計測可能なもの6個体が得られた。計測値の統計処理(縄文人,渡来来弥生人,北海道アイヌ男性の頭骨計測値を基墓にした正準判別分析)の結果,これらの人骨は,縄文,アイヌに近いことが明らかになった。しかし,一方では,恵山人の顔高が縄文人のそれよりも高いことが指摘されるなど,弥生人の遺伝的影響も考慮された。
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