最近の消費者信用の普及のもとで消費者の破産制度の利用は著しいが、本研究は、免責制度が破産者の生活にどのような積極的あるいは消極的効果を及ぼしているかを実態に即して検討し、弁済計画の組み入れを立法論として考究することを目的とする。そこで本研究は、破産者の状況や意見を徴するための実態調査を試みることとした。すなわち、昭和63年度において、官報に掲載されている破産公告のなかから破産免責が確定した破産者のうち東京地裁八王市支部および釧路地裁管内に住所または居所を有する者(約400)に対するパイロット調査を実施した。本年度においては、その回答結果を分析するとともに、調査表に若干の修正を加え、あらためて全国規模で破産免責の確定した者(約2000)に対し調査を行った。いうまでもなく、破産免責制度は戦後の破産法改革のなかで破産者の更生をもたらすはずのものとして制度化され、その運用において積極的意義を有することは疑がないが、他方で、信用利用の途絶など破産による事実上の不利益を完全には免がれていないことも予測できる。債務者によっては、もし債務の弁済の猶予と免除を含む弁済計画を提出することによって破産という不利益を回避できる手段が立法上認められれば、破産の申立てにより免責を得るよりもその効用が大きいことが考えられる。弁済計画による破産回避の試みは種々の段階で考えられるが、本研究は免責を受けた破産者について弁済計画の提出の可能性とその範囲を経験的に採ることを試みたものである。
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