研究概要 |
この研究の目的はロシア革命から第二次世界大戦にいたるまでのソ連の内政と外交に、軍事的要因がいかにかかわりあい、いかなる影響を与えたかを究明することにある。具体的には軍事的要因がロシア革命とボリシェヴィキ権力の樹立、ネッブ期の内政と外交(とくに党内抗争と社会主義建設に関する論争との関係において)、集団化と工業化によるスタ-リン体制の確立、反対派と軍の粛清、第二次世界大戦の開始にいたる歴史過程の中で、いかなる重要性をもって具体的な政策決定過程に影響を与えたかを、軍事ドクトリンの変遷、軍事組織の変遷、党軍関係の進展という三つの視角からから分析しようとするものである。平成元年度の研究活動は、昭和63年度における主要文献の第一次入力の完了をうけて、当初の計画通り、引き続きソ連の軍事関係文献の組織的収集と主要文献の分析を行うことに努め、各研究所の基礎分析は順調に進捗している。一方、研究対象とするソ連本国で進行中の歴史見直しは今年度に入って本研究テ-マに直接かかわる領域にまで波及してきた(とくに内戦期の党主流と軍事反対派との論争、第二次世界大戦前夜における軍の粛清と緒戦敗北の責任問題等で重要資料が初公開された)。旧代表者のアメリカ出張に伴い、研究組織の縮小を余儀なくされたが、今年度における文献収集と基礎分析の作業は、旧代表者のアメリカの研鑽,また本研究の開始時点では予想されなかったソ連本国での資料解禁ともあいまって、来年度に研究活動の総括を行うに十分な条件をつくりだした。旧代表者が復帰する来年度には、当初の予定にあって中断しているSOVSET(アメリカで開発されたソ連政治のデ-タベ-ス)利用計画の実現も見込まれているので、研究の取りまとめに着実な成果を挙げることが期待されている。
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