研究課題
一般研究(B)
現在の研究成果は、論文集として添付されている。第一に、国際環境の変動と農業政策の変動を米国の事例を中心に検討したものと、第二に国内の農業補助行政とGATT体制との相克(工業部門と較べると、とりざたされるほどには、実は農業部門では大きいものではない)の解明、さらに第三に日本国内に絞って農業政策のパッケ-ジが生まれる一つの原因ともなった社会党の農業政策と農村票を論じた歴史研究、ここまでが一応の完成稿となった。研究の出発点に帰ってみれば、この共同研究は、従来の一国中心的な「農政」論から脱却する一つの試みであった。三つの点が確認された。第一に、農業政策における公共財政の役割は、生産規模や生産コストなどの経済的要因によって説明できない。それはすぐれて政治的諸変数の帰結であり、政治体制の形態によって説明される。作付規模を例にとれば、規模の大小で生産性を説明できないのはもちろん、国家財政による補助の大きさとも相関がない。総じて作付が小さいほど小口の補助が多く、作付が大きいほど国外市場開発のための国家による支援に傾くとしても、これらは生産者がどのように政治的に組織化されているか、また利益団体の利益表出に政策決定がどれほど敏感であるかによって大きく異なっている。第二に、公共財政の補助・介入と生産性との間には一義的な因果関係がみられない。第三に、農業製品に関する国際協調の制度化は、他の問題領域における協調とは全く独立している。工業製品において貿易紛争が存在しなくても、農業問題は浮上するし、逆に工業製品に関する紛争を「棚上げ」しても農業問題の解決が可能である。米国を中心に主張される「リンケ-ジ」政策の現実の効果は小さい。以上の研究成果の内、まだ論文として完成していないものがるのは残念であるが、添付論文集にそれらの論考を加えて、単行書として公刊する計画を現在進めている。
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