昭和63年度に行なった研究は、以下の4点に要約できる。 1.先端技術と産業の定義と分析の枠組み(池田):革新技術、産業、社会資本生活環境等の科学技術や統計情報を用いたシステム分析により先端技術産業のがいねんを定義し、都市地域システムのインパクトを計量化する枠組みを構築した。この分析の枠組みに沿って、分析対象の産業を工業統計表を利用できる電算機、電子応用装置、電気通信機械、半導体、医療機器、理化学機器、医薬品、精密機械機器、分析機器の各産業に特定した。 2.論文レビュー(池田、田渕):従来の産業立地論のレビューをすることによって、先端技術産業の立地分析にどの程度の応用が可能であるか検討した。また先端産業立地に関する日米の実証研究のサーベイも行った。 3.先端技術産業の産業連関分析(池田):上記2のレビューによって、企業の立地は関連企業間との取引に大きく依存しているという知見を得た。このことを実証するために、全国レベルの産業連関表(細分類)を用いて、先端技術産業と取引の多い産業を抽出し、それら相互の空間的分布を調べ、近接性の検証を行なった。 4.先端技術産業の都市集積と地域間分業体制の実証分析(田渕):各地域各産業の特化係数を求めることによって、先端技術産業の大都市集積の状況を把握したが、産業によって立地動向の相違がかなり認められた。また、先端技術産業において地域間の分業がどの程度進行しているかを見るために、職業別就業人口の地域的分布を調査した。 次年度は上記の研究成果をまとめつつ、更に、先端産業立地行動の動学的理論モデル(宮尾)、先端産業立地の費用便益分析(池田、宮尾)、先端産業立地の日米比較分析(池田、宮尾)の研究へと進む予定である。
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