研究概要 |
平成元年度に行なった研究は、以下の3点に要約できる。 1.先端技術産業の定義と数量的基準の枠組み(池田):先端技術産業の概念の定義とその分類を行うための数量的な基準を開発すると共に、都市地域システムへのインパクトを計量化する枠組みを構築した。この数量分析の枠組み(研究開発費と研究技術者の相対的な割合と産業部門の規模、生産性、成長性に関する経済指標から構成されている)により分析対象のハイテク産業を電気・通信機器,半導体,医薬品,精密機械機器,などの産業小分類で18産業、細分類で54産業を特定し、各産業部門の地域的な特徴(都道府県単位)を抽出した。 2.先端技術産業立地の地域経済への影響分析(池田):先端技術産業の立地活動の地域経済への影響を都市規模別に、特に、労働力需要と関連産業の集積機能に注目した多変量回帰モデルを各産業部門毎に誘導して比較分析を行なった。関連産業の集積(特にサ-ビス、情報、本社機能)に関する要因は共通に重要であったが、高速交通基盤、電力・水賦存量の生産基盤、地域アメニティに関する要因は産業別、都市規模別に異なった影響が見られた。 3.先端技術産業の立地行動の日米比較(宮尾):先端技術産業の立地行動に関する理論的、実証的分析に基づき日米の比較を行い、高度産業社会における地域産業政策のあり方を探った。結論として、先端技術産業を育成し、支援して行くために地域レベルの産業振興策の重要性が認識されると共に、先端産業を担う新しい人材(知識指向型労働力)の育成と新規起業の立ち上がりを支援する様々なサ-ビスの利用可能性が大きな役割を果たすと考えられる。今後の課題として、人材育成のビジネス・スク-ルや大学院大学の設立や新規事業支援のインキュベ-タなど頭脳立地の普及を図る必要がある。
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