研究概要 |
超短時間分光システム、および低温高圧装置を開発し、半導体中の不規則性に局在した励起子の超高速緩和過程を明らかにすることを目的として研究を進めている。当該年度に得られた結果を列記する。 1.受動モ-ド同期色素レ-ザを用いたフェムト秒パルスレ-ザシステムにプリズム補償機能を附加して、システムの性能を向上させた。この結果、100フェムト秒以下の分解能で高速励起緩和過程の研究が可能となった。 2.フェムト秒パルスを用いたフォトン・エコ-法によりGaSeの準2次元局在励起子の位相緩和時間を測定した。位相緩和時間は30K以下で3ピコ程度、それ以上ではほぼ直線的に短くなっている。この結果はGaSeでは局在励起子の位相緩和は30K以下では不純物散乱、それより高温ではフォノン散乱過程により支配されていることを示している。 3.局在励起子の輻射寿命の温度変化を発光の減衰時間と効率の温度変化より導きだした。その結果,局在励起子の輻射寿命と位相緩和時間には強い相関があることを見いだした。この結果は、低次元系励起子の輻射寿命が位相緩和過程により制限された励起子のコヒ-レンス体積により決められるという最近の理論予測を実験的に支持している。 4.ダイヤモンドアンヴィルを用いた低温高圧装置中で半導体超格子の励起子状態およびダイナミックスを調べた。低温に於けるGaAs/AlAs短周期超格子及び混晶系の励起子系の動特性は外部圧力に強く影響を受けることが判明した。この傾向は、X点とΓ点のエネルギ-位置が近接した試料において著しく、X-Γ散乱の励起緩和過程に及ぼす影響の重要性を示唆している。
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