研究課題/領域番号 |
63460025
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
黒田 規敬 東北大学, 金属材料研究所, 助教授 (40005963)
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研究分担者 |
仁科 雄一郎 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (90005851)
酒井 政道 東北大学, 金属材料研究所, 助手 (40192588)
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キーワード | 擬一次元白金錯体 / ソリトン / 動力学特性 / ギャップ内光吸収 / 電子スピン共鳴 / メソスコピック / ホッピング運動 / 拡散 |
研究概要 |
擬一次元白金錯体結晶をレ-ザ-光または紫外光で照射するとメソスコピックなサイズを持つ価数不整状態が効率的に励起される。この状態は電子・格子結合の強い擬一次元半導体に特有のソリトンによるものと我々は考えてきた。しかしながら、これまでの研究で主眼を置いていたギャップ内吸収線の分光スペクトルのみに基づく限り、この状態が単なるポ-ラロンである可能性を完全に否定することができなかった。そこで本年度はこの状態がソリトンか否かという問題の解決に重点を置き、高圧顕微分光やラマン散乱分光に加えて電子スピン共鳴法を併用して[Pt(en)_2][Pt(en)_2Cl_2](C10_4)_4(en=エチレンジアミン)単結晶中に光誘起される価数不整状態のスピン構造と、それらの運動形態や衝突・変換過程などのダイナミックな性質を系統的に調べた。 電子スピン共鳴スペクトルに現れる超微細構造と極超微細構造を詳細に検討した結果、低温で光誘起された価数不整状態は白金原子の二量体構造を持つスピンソリトンであることが確認された。これらのソリトンは極低温では巨視的運動をせず平衡位置の周りで揺らいでいるが、温度の上昇につれて一次元結合上でホッピング運動をし始め、その相関速度は室温で10^9 sec^<-1>に達する。また一次元結合間でも移動してゆき、結晶表面から内部へと拡散する。二つのスピンソリトンが衝突しても対消滅を起こさず、非磁性状態との相互変換を通して熱平衝を保つ。高圧顕微分光とラマン散乱分光測定で得られた定量的知見に基づく解析より、この非磁性状態は荷電ソリトンであるとの結論を得た。荷電ソリトンとスピンソリトンのエネルギ-差は高々14meVと小さいため、100K以上の温度では多くのスピンソリトンは荷電ソリトンに変換される。このようにソリトンのダイナミックスについての基本的な性質も明らかとなり、本年度の研究目的をほぼ連成できた。
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