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1988 年度 実績報告書

強い電子-格子相互作用に基づく有機分子性強誘電体の合成と物性

研究課題

研究課題/領域番号 63460030
研究機関東京大学

研究代表者

十倉 好紀  東京大学, 理学部, 助教授 (30143382)

研究分担者 腰原 伸也  東京大学, 理学部, 助手 (10192056)
キーワード有機強誘電体 / 電子-格子相互作用 / ソリトン / 1次元強誘電性 / 電荷移動錯体
研究概要

本研究では、種々の光電的・磁気的物性を有する新しい型の有機分子性強誘電体・反強誘電体を合成し、その基礎的物性を明らかにすることを目的としている。本年度は、特に交互積層型電荷動錯体の系について集中的な研究を行い、予期通り、多くの電荷移動(CT)錯体で、1次元強誘電性を伴う反強誘電性相転移を見いだすことができた。CT錯体結晶を対象とした強い電子-格子相互作用に基づく低次元強誘電体の合成・探索の指針は次のとおりである。ドナー分子(D)とアクセター分子(A)が交互に積層し、かつDA積層がイオン的(D^+A^-)である場合には、各分子上に1/2スピンが存在するために、強い電子-格子(または、スピン-格子)相互作用によって、積層格子の二量体化(結合秩序波BOW状態)が起こる。D^+A^-の対は双極子を発生し、協力現象のために1次元強誘電性が発現する。このようなシナリオは、我々が合成・作製したイオン性DA錯体においてある臨界温度(50K〜室温以上)以下で実際に実現されることを、格子変形強度(赤外振動スペクトル解析による)、帯磁率、誘電率の温度依存性の測定によって明らかにした。多くのCT錯体の誘電的相転移は、BOW歪の温度変化の挙動から「変位型」または「秩序-無秩序型」の特徴を示し、特に後者は低次元系に特有なゆらぎによる。また相転移点の上下で、誘電率は、0-10MH_2の緩和時間tを示し、tは熱活性化型の著しい温度依存性を示す。擬1次元強誘電体のドメトン壁は、スピンまたは荷電をもつキンク型のリリトンとして振る舞うことが期待されるが、上記の誘電応答はこのようなドメイン壁の鎖間相互作用の制約下での運動性によると考えられる。緩和時間の温度依存性から導いた活性化エネルギーは、電気伝導の活性化エネルギーと強い相関があることが、多くのCT錯体で見い出され、これはドメイン壁の解離が電気輸送現象にも重要であることを示している。

  • 研究成果

    (6件)

すべて その他

すべて 文献書誌 (6件)

  • [文献書誌] T.Mitani;Y.Kaneko;S.Tanuma;Y.Tokura;T.Koda;G.Saito: Phys.Rev.B. 35. 427-429 (1987)

  • [文献書誌] T.Mitani;V.Tokura;Y.Kaneko;K.Takaoka;T.Koda;G.Saito: Synthetic Metals. 19. 515-520 (1987)

  • [文献書誌] Y.Tokura;H.Okamoto;T.Koda;T.Mitani;G.Saito: Phys.Rev.B. 38. 2215-2218 (1988)

  • [文献書誌] H.Okamoto;T.Komatusu;Y.Iwasa;T.Koda;Y.Tokura;S.Koshihara;T.Mitani;G.Saito: Snthetic Metals. 27. B189-B196 (1988)

  • [文献書誌] H.Okamoto;T.Koda;Y.Tokura;T.Mitani;G.Saito: Phys.Rev.B.

  • [文献書誌] Y.Iwasa;T.Koda;S.Koshihara;Y.Tokura;N.Iwasawa;G.Saito: Phys.Rev.B.

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公開日: 1990-03-19   更新日: 2016-04-21  

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