今年は初年度であることをふまえ、東京と小笠原を結ぶ定期航路船によるXBTモニタリングの準備、資料の収集とその予備解析を行った。主な研究実績は以下の通りである。 1.XBT(投棄式水深水温計)による黒潮のモニタリング 「おがさわら丸」(小笠原海運株式会社)による観測を行うため、XBTコンバータろ記録装置を購入し、1988年8月の航海で試験を実施した。装置、解析プログラム等全て順調であり、2カ月に1度モニタリングを行うこととし、11月、1989年2月、3月に実施した。このモニタリングの結果は、速報として国内20の機関に送付している。このモニタリングから現在明らかになったこのことは、東京と小笠原の間は表層水温構造とその変動から、黒潮流軸までの沿岸域、黒潮強流帯域、反流域、亜熱帯前線域に分けられることがわった。また、亜熱帯モード水は、30〜29°Nを中心とする反流域を東から西へと日本南方域へと流入することもわかった。 2.小笠原水産センター「興洋」の水温資料の解析 父島にある小笠原水産センターの「興洋」による水温資料を、1973年の観測開始以来現在までの分を計算機入力し、解析を行った。その結果、1に記したように小笠原近海は亜熱帯前線の南に位置していること、亜熱帯モード水はこの海域では形成されないことがわかった。さらに、亜表層の亜熱帯モード水は、年々変動の他に大きな数年周期の経年変動を持っていることが分かった。 3.海上気象資料の解析 亜熱帯モード水の形成に及ぼす大気の変動、逆に大気に対する亜熱帯モード水の役割を調べるため、北太平洋上の風の応用場の解析、海面フラックスのデータセットの作成を行った。本格的解析は次年度行う。
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