初年度に続き今年度は以下に挙げる各項目について研究を進めた。 1.XBTによる黒潮のモニタリング 小笠原海運(株)所属の「おがさわら丸」によるXBT観測を2ヵ月に1度の割合で行った。年度末までに前年度と合せ9回に及ぶ。また、6月と11月には、研究船を用いた観測も行った(淡青丸、望星丸)。これらの資料と他機関の資料を解析し、1989年冬季は混合層の発達が悪かったこと、非蛇行流路を黒潮がとっていたため、亜熱帯モ-ド水の日本南方への流入が顕著であることがわかった。 2.日本海洋デ-タセンタ-(JODC)提供の各層観測資料の解析 標記資料をふたつの観点から解析した。ひとつは黒潮の蛇行・非蛇行に伴う亜熱帯モ-ド水の分布と移動で、双方の期間でモ-ド水の性質や分布・移動が全く異なることがわかった。これは黒潮の蛇行・非蛇行に伴う黒潮反流、広く黒潮循環系の相違による。すなわち黒潮の蛇行時には、黒潮続流で形成された亜熱帯モ-ド水は、日本南方への侵入を阻止される。ふたつ目は、黒潮そのものが運ぶ水塊の経年変動を明らかにする試みである。このため、水温躍層の深さを用いた座標系を新たに導入した。今年度は、1に述べた断面に適用し、その有効性を確かめた。 3.旧海軍水路部の広域一斉観測資料の解析 旧海軍水路部は、1938〜1942年にかけて西部北太平洋を対象として、多数船による一斉観測を行った。これまでこの資料に対する詳細な解析例はない。今年度は1940年夏季の資料を解析した。その結果、当時黒潮は蛇行していたため、伊豆海嶺の東西では亜熱帯モ-ド水の水温が2℃以上異なること、続流域のモ-ド水は現在のモ-ド水に比しても1℃程度低いことがわかった。
|