研究概要 |
本研究の最終年度となる今年度は以下に挙げる各項目について研究を進め,さらに本研究のまとめを行い,成果報告書を作成した. 1.黒潮のXBTモニタリングと観測船による亜熱帯モ-ド水の観測 小笠原海運(株)所属の「おがさわら丸」によるXBT観測を2カ月に1度の割合で行った.年度末までに6回行うことができた.また,今年度も研究観測船淡青丸(KTー90ー5)と白鳳丸(KHー91ー1)の航海に参加し,本州南方の混合層と亜熱帯モ-ド水の分布の観測を行った.これまでの資料も合せ伊豆海嶺上の黒潮域の水温構造の季節変化を考察した所,冬季続流域で形成された亜熱帯モ-ド水が,季節の進行とともにこの断面に侵入していることが確認された. 2.XBT水深算出式の再検討 上記1項に述べたXBTの水深は,プロ-ブの海面着水からの経過時間で評価される.メ-カが提出している算出式が妥当であるか再検討を行った.これまで蓄積されたXBTーCTD比較実験資料の検討から,XBTメ-カの提出している算出式は落下速度を過小評価していることを再確認した.また,比較資料毎に算出式は系統的にばらつくことが分かった.しかし,この原因究明までには至らなかった. 3.黒潮からの暖水のバ-スト現象に対する事例解析 研究初年度に行った研究船資料に,黒潮の南方の表層に暖水が見られた.この期間に人工衛星NOAA熱赤外画像を集め観察した所,黒潮の蛇行の峰の部分から黒潮表層水が南西に突出したものであることが分かった.この様な暖水のバ-スト現象は年に何度か生じているらしい.この暖水が,この海域で過剰に放出している大気への熱フラックスの,かなりの部分を補なっていることが分かった.
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