現実の海岸・海底地形及び風デ-タを取入れ、さらに現実的な表層熱流束も考慮して高解像度のOGCMを開発し、太平洋循環系の変動を調べた。その結果以下に述べるような成果を得ることができた。 1.高解像度海域モデルの関する成果:海洋物理学的にも、生物学的にも重要なコスタ・リカ ド-ムの季節変動の平均的描像が明らかになった。ド-ムは春季にその萌芽が現れ、夏季にITCZに吹き込む南からの貿易風の強化と共に発達し、9月頃最盛期を迎える。冬季にはITCZに吹き込む北東季節風によって分断され弱まる。ド-ムの発達には夏季の南からの貿易風が重要な役割を果たしているが、それと共に冬から初春にかけて吹く北東季節風が作る比較的小規模の冷水域の存在がド-ムの形状を規定する重要な条件となることがわかった。 2.太平洋全域モデルに関する成果:インド洋・太平洋域を含む高解像度のOGCMを季節変動を含む風の気候値で駆動した。その結果太平洋循環系については、赤道域の基本的な温度構造や流速分布、及びその季節変動が再現された。日本付近の黒潮も再現され、観測と合致する流量が得られた。特に、ENSO現象の発生源と目されている西太平洋赤道域については、その海洋循環がアジアモンス-ンと深く関連していることが明かになった。更にミンダナオ沖に再現された湧昇域、ミンダナオ・ド-ムの消長は、ENSO現象の予測問題に関して重要な要素であることがわかった。更にこのド-ムの季節変動は、日付変更線以西の風の場(アジア・モンス-ン領域)に支配されていることが、風の場を人為的に操作した「計算機実験」によりはじめて明らかになった。
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