迅速かつ多数の細粒堆積岩の化学分析を行う目的で、卓上型蛍光X線分析装置(XRF)による分析法を開発した。また、湿式分析法、他のXRF法、ICP発光分析法などと比較してこの方法の精度を検討した。その結果、標準サンプル法(第1回は基準サンプルを用いて定量し、第2回はSiO_2/Al_2O_3値の近い標準サンプルを用いて定量する)により、主要元素のうちMgOを除くと精度のよい分析値が得られることがわかった。 この方法を用いて、北海道八雲地域と秋田県北鹿黒鉱鉱床地域のボ-リングによる新第三紀泥質岩の約500サンプルについて化学分析を行った。その結果は以下のとおりである。 (1)TiO_2/Al_2O_3比は両地域のほとんどのサンプルが、普通の火山岩の領域に入っており、火成活動の影響が強いことを示唆している。これはグリ-ンタフ地域の泥質岩の基本的特徴と考えられる。 (2)SiO_2/Al_2O_3は下位から上位へ増加する傾向がみられる。とくに八雲地域ではこの傾向が顕著で、下位の左俣川層基底では火山岩領域よりAl_2O_3に富み、上位の八雲層では著るしくSiO_2に富んだものがみられる。前者は基盤の風代殻からの寄与が大きく、後者は珪質生物遺骸からの寄与があったためと解釈される。北鹿黒鉱鉱床地域の場合も本質的に同じであるが、珪質頁岩の領域に入るものは少ない。 (3)Fe_2O_3はTiO_2と同様にほとんど火山岩領域に入るが、鉱床近傍では著るしく熱水変質作用によって富化したものがみられる。 (4)アルカリとアルカリ土類についてはMnOを除き、著るしいばらつきがあり、熱水変質作用に伴う成分移動のためと解釈される。鉱床近傍ではK_2Oの値が高く、CaOとNa_2Oは低い値を示す。これは凝灰岩や火山岩についてすでに報告されたのと全く同じ結果である。
|