研究概要 |
ESR年代測定については、天然ジルコンおよび種々の元素をド-プした合成ジルコンに、熱中性子およびX線を照射し、g=2.000から2.009の間に現れる5つの信号は、放射線の照射に関係しており、不純物によるものではないことが明らかになった。特に、g=2.008の信号は、ジルコンに含まれる放射性元素の壊変に伴うα粒子によると推定されたので、Caをド-プしたジルコンに熱中性子を照射して^<40>Ca(n,α)^<37> Ar反応を起こし、人工的に信号を生じさせることに初めて成功した。したがって、この信号は年代測定に使用できることが確かめられた(J.Min.Petr.Econ.Geol.85)。 TL年代測定については、年間線量率を見積る方法として、前年度に購入したα線スペクトロメ-タで裁定するケ-スと、試料とTL素子を混合し放射線量を測定するケ-スについて、その妥当性を検討した。前者はジルコン試料がかなり大量に必要であるが、後者は10mg程度でも測定可能であり、実用的であることが明らかとなった(発表予定)。 FT(フィッション・トラック法)については、若いジルコンのエッチング特性を明らかにし、若い試料でもトラック密度は飽和状態に達し年代測定が可能なことを確かめた(Nucl.Tracks,15)。 上の3手法について、本質ジルコンと時代の異なる異質ジルコンを結晶形態の定量的記載によって識別できることを示し、さらに地球科学の諸分野で利用できることを示した(地質学雑誌、96)。
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