チョクラルスキ-法により〔111〕方向に育成された希土類ガ-ネットLa_<2.5>Lu_<2.5>Ga_3O_<12>(LLGG)とGd_3Sc_2Ga_3O_<12>(GSGG)結晶には、ファセットができる。このファセット及びオフファセット領域の間で、バルクの化学組成は変わらないが格子定数が少し違っていることから、陽イオンの席占有率が異なっている可能性が示唆されている。そこで、これらの結晶構造を精密に解析し、各原子の席占有の状態について調べた。X線強度の測定には約0.1mmの大きさに成形した球状結晶を用い、多重反射や消衰効果を十分に吟味しながら数百の独立な回折強度を精密に測定した。原子座標、席占有率、異方性温度因子、異方性消衰効果をそれぞれパラメ-タとして最小自乗法で構造の精密化を行い、最終のR因子として1.7〜1.8%を得た。このようにしてX線構造解析から求めた化学組成は、ICP分析装置により求めた値とよく一致した。また、ファセット領域とオフファセット領域間の組成の違いは殆んどなかった。これは、分析電顕による微小領域分析でも同様であった。ガ-ネット構造には陽イオン席として、8、6、4配位席がある。これらの席占有率を解析した結果は以下のようであった。LLGGでは、8配位席は85%がLa原子で15%がLu原子、6配位席は100%Lu原子、4配位席は97〜99%がGa原子で残りの1〜3%が空孔であった。一方、GSGGでは、8配位席は100%Gd原子、6配位席は92〜95%がSc原子、2〜4%がGa原子で残りの3〜4%が空孔、4配位席は95%がGa原子で5%が空孔であり、酸素位置にも約3%の空孔が存在していた。以上いずれのガ-ネットでもファセット領域とオフファセット領域での各原子の席占有率の差は高々2〜3%で、あるとしてもほんのわずかな違いに過ぎないことが分かった。
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