昭和63年度の研究計画は第1に、気相成長装置と表面固相反応の解析を可能にする装置を試作することであった。反射電子回折装置および高真空気相成長装置を試作することによって、成長初期段階を動的にその場観察可能な実験系を組み立てた。これにより、未だ不明な点の多い平均膜厚にして単原子層から数原子層の成長初期段階での界面反応と成長機構および格子欠陥導入機構の関連について評価可能となった。本装置を用いて、GeH_4ガスの熱分解による(100)Si基板上にGeのヘテロエピタキシャル成長を行い、成長初期段階を動的に観察した結果、以下の新たな知見が得られた。 1.基板温度300〜700℃の範囲で、Geは歪を持って数原子層程度の単原子層成長の後、島状成長することが見出された。しかも、島状結晶は優先的な結晶面を持つことが見出せた。すなわち、まず{811}面から成るファセットが成長し、成長とともに{311}ファセット面に変化していくことが明らかとなった。このことは{811}面が原子の配列状態を含めてエネルギー的に安定な結晶面であることを意味し、従来の理論では説明することができず、新しい問題を提起している。 2.島状結晶の成長速度は基板温度の逆数に対して指数関数的に減少し、500℃および以下においてその活性化エネルギーが異なる。このことから、成長時の反応活性化プロセスがこの温度域で異なることが判明した。 3.成長開始から{811}ファセット面が出現するまでの時間は基板温度が高くなる程、短くなることが見出された。今後、反射電子回折点の強度振動を測定することによって、単原子層成長時の成長速度を正確に決定し、成長機構を検討する予定である。
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