誘電率が異なる境界面に沿って電磁波が伝搬することはsurface-wave radarなどに利用されている。筆者は、この現象をエピ膜の評価に利用するための光学系を組立てて散乱光による画像を作ったところ表面近傍にある欠陥を明瞭に観察できることを確認した(Japan.J.Appl.Phys.26(1987)L1638〜L1641)。この表面波発生条件よりも僅かに小さい入射角では、半導体の屈折率は3.5と非常に大きいため、ウエハーを導波路として伝搬する波が発生する。この波はウエハーの上面と下面との間の繰返し反射であるため、これらの波の干渉として等厚干渉縞が観察された。これからエピタクシャル膜の形状が光の波長の半分の精度で検出できる。 この方法の完成と、この方法による半導体表面の欠陥がテバイスに及ぼす関係を明確するため、再現性をよく表面波を伝搬させることを当面の目的として装置を組み立てつつある。このため、赤外線領域の1.15μで発振するHe-Neレーザーを購入した。表面波の発生を確実とするための、鏡の微調整装置については平成元年度に慎重に検討する予定である。イオン注入機でGaAsウエハー表面にSiとAsを200Kev10^<13>/cm^2程度に打ち込んだ試料については、明視野法で観察でき、かつ、ドーズ量の半定量的測定が可能となることを確認したが、暗視野による欠陥観察の有用性を考え、この目的の為に明・暗視野両用の赤外線顕微鏡を購入した。このようにして、明・暗視野による観察法を組み合わせてイオン注入層の評価のみならず、表面処理により生ずる欠陥、キャリヤー分布の変化、エピタクシャル膜内の欠陥観察のみならず基盤とエピタクシャル膜との境界についての研究を行うべく準備しつつある。
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