プレ-ナ-素子の発展に伴い表面は半導体ウエハ-で最も大切な部位となった。エピタクシャル成長はこの目的に適った理想的な単結晶表面を得る技術であり、イオン注入は所用の電気的特性をもった表面を出現させるための非常に大切な技術である。したがって非接触でウエハ-表面を評価する手法を確立することは、時代の急務であろう。 小川は電気的特性が異なる境界面に沿って伝搬する電磁波を利用したsurface-wave radarにヒントを得て、これと類似な手法によるエピ膜の評価法を考家した。すなわち、擬似表面波光およびウェハ-またはエビ膜を導波路として伝搬する光の散乱による評価法の開発である。これにより、表面近傍にある欠陥が明瞭に観察できることが確認された。この表面波光の発生条件よりも極僅かに小さな入射角で光を入射すると、半導体の屈折率は3.5程度と非常に大きいため、ウエハ-の上面と下面との間に繰返し反射が起り等厚干渉縞が観察された。これからエピ膜の厚さの一様性などが精度よく検出できた。 このような表面で生ずる光散乱を研究している途中で、イオン注入で生じた放射損傷がレ-リ-散乱中心として働くことを見つけた。この現象は透過光でみつけられたが、最近反射光でも観察できることを確認した。イオン注入法は半導体表面を改変する手法として不可欠の技術となっている。ここで開発した散乱光強度による注入量の計測は、注入量を電流で監視する現行技術と独立に、また、併用することによって、イオンビ-ムの走査の“むら"による注入量の“むら"の検出などに有効である。この反射型散乱法では、透過法では不可能であった高濃度キャリヤ-のウエハ-、裏面をサンドブラストしたエウハ-の注入層の評価が可能となり、今後、非常に重要な手法の一つとなろう。
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