VLSI技術による高速・高密度化は、集積回路内部のみならず、コンピュータシステムの各階層における結線量の増大、信号伝搬の遅延、線路の帯域不足などの結線上の問題のために徐々に物理的限界に近づきつつあり、演算速度が、素子自身のスイッチングスピードではなく、素子間を結ぶ電気的線路の信号伝達能力の限界のために頭打ちになる、いわゆる結線リミテッドの現象が既に高速コンピュータシステム内の随所で現れ始めている。本研究は、コミュニケーションクライシスと呼ばれるこの障壁を乗り越えるために、光の持つ高速、広帯域、無誘導、並列性などの特徴を生かした光インタコネクション技術の基礎をつくることを目的とし、本年度は、以下の事項を実施した。 (1)光インタコネクション素子(アレーイルミネータ)の原理の考案 2次元アレー状に集積化された光論理デバイスや光双安定素子に光パワーを供給するための配光デバイスとして、光導波路の表面にホログラフィ技術を用いてグレーディングカップラを作成するという新しい方法によるホログラフィック光インタコネクション素子(アレーイルミネータ)の原理を考案した。 (2)光インタコネクション素子(アレーイルミネータ)の試作 上述の原理に基づく素子を、まず最初に1次元アレーに対して試作しさらにその素子を2つ組み合わせて2次元アレー用の素子を製作した。それらの素子にレーザビームを入力することにより、実際に多数のアレー状のビームのファンアウトが得られることを実験的に確認した。 上記の中間結果は、本年3月に米国ユタ州で開催された光コンピューティング国際会議で口頭発表するとともに、現在論文として投稿中である。
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