共役電子系をもつ電子機能性高分子は可視域に吸収をもつものが多いので、通常のHe-NeレーザやArレーザのような可視光源を用いた電気複屈折緩和スペクトロメータでは、電子機能性高分子の溶液系の電気複屈折緩和を測定することは困難である。そこで、本研究では試料による吸収損のほとんどない近赤外域で発光する大出力半導体レーザを光源とし、きわめて短時間のうちに緩和スペクトルの全貌を得ることのできる高精度・広帯域のリアルタイム電気複屈折緩和スペクトロメータを開発し、それを溶媒可溶の電子機能性高分子に適用してその電子状態・主鎖形態を明らかにする。また、EOスイッチングシステムにより励起光照射をオン・オフしたあとの系の時間変化を追跡する。本年度の研究成果は次の通りである。 1.まず比較的小出力(40mW)の半導体レーザ光源システムの試作を行い、光出力の絶対値および安定度に関して良好な結果を得た。この経験を踏まえて、大出力(250mW)の半導体レーザ光源システムの開発を行った。 2.上述の半導体レーザ光源システム、高速印加電場発生装置、およびトランジェント・メモリを組合せて、電気複屈折緩和スペクトロメータを構成し、溶媒可溶の電子機能性高分子として代表的なポリジアセチレンnBCMUおよびポリアルキルチオフェンの良溶媒・貧溶媒中での電気複屈折緩和スペクトルの予備的な測定を行った。その結果、ポリジアセチレンおよびポリチオフェンの溶液中における電気分極機構および主鎖の形態に関して基礎的な情報が得られた。 3.励起光照射をオン・オフにするためのEOスイッチングシステムを開発した。
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