共役電子系をもつ電子機能性高分子は可視域に吸収をもつものが多いので、通常のHe-Neレ-ザやArイオンレ-ザのような可視光源を用いた電気複屈折緩和スペクトロメ-タでは、電子機能性高分子の溶液系の電気複屈折緩和を測定することは困難である。そこで、本研究では試料による吸収損のほとんどない近赤外域で発光する大出力半導体レ-ザを光源とし、きわめて短時間のうちに緩和スペクトルの全貌を得ることのできる高精度・広帯域のリアルタイム電気複屈折緩和スペクトロメ-タを開発し、それを溶媒可溶の電子機能性高分子に適用してその荷電キャリアの状態および主鎖形態を明らかにした。本年度の研究成果は次の通りである。 1.前年度に開発した高安定・大出力の半導体レ-ザ光源システムを、高速・高分解能トランジエント・メモリおよびシステム・コントロ-ラとしてのパ-ソナル・コンピュ-タと組み合わせて、高速・高精度リアルタイム電気複屈折緩和スペクトロメ-タを実現した。 2.開発した電気複屈折緩和スペクトロメ-タを用いて、溶媒可溶の電子機能性高分子として代表的なポリジアセチレン(nBCMU)およびポリチオフェンの良溶媒ならびに貧溶媒中の電気複屈折緩和スペクトルの測定を行った結果、ポリジアセチレンおよびポリチオフェンの溶媒中における電気分極機構(局在した荷電キャリアのつくる永久双極子の配向分極、あるいは非局在キャリアによる誘起分極)および高分子主鎖の形態(棒状あるいはランダムコイル状)についての重要な情報が得られた。
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