研究概要 |
火星や金星の大気圏内で使う、二酸化炭素を酸化剤・作動流体とし金属を燃焼とするジェットエンジンの燃焼器開発の基礎デ-タを得ることを目的に、本研究は二酸化炭素流の淀み領域に置かれた金属試料の着火・燃焼過程の解明を進めている。以下に本年度の研究実績の概要を示す。 1.ボロンの火炎構造の解明 ボロンの二酸化炭素中での振舞いと比較するため、酸素流中でのボロンの着火温度や火炎構造などを光学的手法を用いて調べた。その結果、ボロンの自発着火限界温度は1310±40℃であり、気相で着火してボロン表面近傍に火炎を形成することがわかった。この火炎は、ボロン表面での反応によって発生したBOガスが気相中で酸素あるいはBO_2ガスと反応して形成されるもので、BO_2ガスとB_2O_3ガスが燃焼生成物として発生することも明らかにあった。 2.アルミニウムの着火温度の測定 二酸化炭素流中でのアルミニウムの自発着火限界温度は1800〜1900℃であることがわかった。 3.アルミニウムの着火・燃焼過程の観察 アルミニウム試料の温度が限界温度以下の場合には表面反応によって反応膜が形成され、着火には至らない。限界温度以上にアルミニウムを加熱した場合、表面反応膜は形成されずにアルミニウム蒸気が直接二酸化炭素と気相で反応して着火し、その表面近傍に極めて明るく輝く火炎を形成することがわかった。観察された火炎スペクトルはAlの輝線スペクトル:396.15,394.40nm及びAlOの帯スペクトル:447.0,464.8,484.2,507.9nmであり、酸素中の火炎と同じであることが明らかになったが、この火炎の構造を解明するには至らなかった。
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